有尾両生類のイモリでは網膜を外科的に除去すると再生する。再生は色素上皮の分化転換によって進行し、網膜再生能は終生維持される。一方無尾両生類では、変態後にはレンズ再生も網膜再生もおこらないとこれまで考えられてきた。しかし、我々が詳細に再検討したところ、アフリカツメガエルでは変態後も網膜が再生することが明らかになった。また、このことは培養条件下でも確認された。アフリカツメガエルでは、色素上皮の分化転換とともに、毛様体辺縁部の幹細胞からも再生が同時進行する。面白いことに、アフリカツメガエルの色素上皮細胞はいったん元の位置から遊離し、残された網膜血管膜に付着した後に、増殖分化する。この網膜血管膜をも除去すると再生がおこらない。このようにイモリとカエルでは現象に違いが見られ、この原因を解析することは再生の仕組みを知る上で非常に重要である。 本年度は、二つの実験動物モデルを用いて以下の研究をおこなった。 1.アフリカツメガエル受精卵に遺伝子導入し、トランスジェニック個体作製をおこなった。まず、GFP遺伝子により導入効率を検討した。次に、色素上皮細胞で特異的に発現するRPE65遺伝子プロモーターの特異性をGFPをレポーターにして検討した。まだ、成功例が少なく、発現効率をあげるために、さら検討中である。 2.アフリカツメガエル眼組織の器官培養実験系を新たに開発した。この器官培養では、網膜を除去した眼組織を丸ごと培養し、色素上皮が増殖し、多層になることを確認できたので、さらに網膜再生が再現できるように条件を検討している。 3.イモリFGF2の特異抗体を用いて、眼組織内の分布を免疫細胞化学により調べた。脈絡膜内に抗体陽性の細胞があり、網膜除去後に、このような細胞が増え、より強く抗体に反応するようになることを確認した。これらの細胞の一部は赤血球であり、イムノブロットでもやはり血球細胞が陽性反応を示した。今後再生に血球がどのように関わっているのかを、詳細に検討する。
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