研究概要 |
私達が単離した新規BMPアンタゴニストTsukushiがオーガナイザー形成に関わる重要なコンポーネントのひとつであることは既に報告した(Ohta et al.,2004)。ニワトリ初期胚でのオーガナイザー再生実験において、Tsukushiの発現が将来オーガナイザーになる領域で増幅されるが、この時に原始線条の中心部に位置するNode Inducing Centre(NIC;カエルのNieuwkoop centreに相当する)と呼ばれる領域においてもTsukushiの発現が増幅されていることを見出した。NICではWnt8CとcVg1が共発現しており原始線条の形成を誘導しているが、様々な実験結果から他にも線条形成に関与する分子の存在が示唆されていた。そこでTsukushiとcVg1を本来なら決して原始線条を形成しない領域に共発現させてみると、異所性の原始線条が形成された。また、生化学的にもTsukushiとcVg1は相互作用をした。これらの結果は原始線条の形成にはTsukushi&cVg1とWnt&cVg1の2つのシグナルカスケードが存在することが明らかになった。 アフリカツメガエル胚における神経堤細胞形成の分子機構として、正中線領域から分泌されるBMPアンタゴニストと表皮領域に発現するBMPとの濃度勾配のバランスにより、将来神経堤細胞になる細胞の運命決定が行われると考えられている。Tsukushiは将来神経堤細胞になる領域に発現していることから、TsukushiがBMPの濃度を微調整して神経堤細胞への分化決定に関与していることが考えられる。Tsukushiを過剰発現させると神経管が側方に拡張し、逆にTsukushiの機能を阻害すると表皮領域が正中線側に広がった。この結果、Tsukushiが神経堤細胞の特異化に関わっていることが明らかになった。
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