研究概要 |
メダカ生殖腺形成突然変異体zenzaiとtotoroの原因遺伝子探索と表現型解析とを行ない、両者について原因遺伝子を特定することができた. zenzaiは生殖細胞が顕著に減少し,不妊となることが主な表現型である.ポジショナルクローニングの結果,第9連鎖群に原因領域を特定することができ,その領域内にある候補遺伝子の塩基配列を変異体と野生型で決定比較した.その結果,膜表面抗原のひとつに変異塩基置換が見いだされ、この遺伝子を含むfosmidによって変異表現型がレスキューされたことから、この遺伝子が原因遺伝子であると特定された(Saito et al, unpublished).また生殖細胞を可視化し、生体内で分裂過程を解析することにより,この変異体では精/卵原細胞の維持の過程に異常が生じることが明らかとなった(Saito et al, submitted). totoroは生殖細胞が異常増殖する変異体である.表現型解析により,遺伝的雄の半数の個体で、外生殖器と生殖腺ともに雄から雌への性転換が生じることが明らかとなった.昨年度来のポジショナルクローニングを継続した結果,第7連鎖群に位置するant-Mullerian hormone receptor typeII(AMHRII)のキナーゼドメインに変異が見いだされ,BACを用いたレスキュー実験により変異表現型が回復することが示された.AMH/AMHRIIシステムは哺乳類で付属生殖器官の雄化に必須であることが知られていたが,今回の結果により脊椎動物生殖腺形成過程における生殖細胞分裂制御と言う共通の機能を有することが明らかとなった(Morinaga et al,2007).性転換は生殖細胞の増殖の結果と考えられたが,逆に生殖細胞を全く欠いたメダカを解析することにより、二次性徴の雌から雄への性転換が見られることも明らかとなった(Kurokawa et al, submitted). これら遺伝子を発現する生殖腺における細胞の系譜・動態・制御様式についても昨年来解析を行なった(Nakamura et al,2006,2007,Takamatsu et al,2007,Kurokawa et al,2006,Saito et al,2006).
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