研究概要 |
本年度は藍色細菌の概日時計遺伝子kaiA,kaiB,kaiC遺伝子座での遺伝的ロバストネスを検証するための材料作製を行った。この時計遺伝子座に突然変異を持つ形質転換用プラスミドコンストラクトを作製するために、PCRによる突然変異導入処理をした1500余りのサブクローンの配列決定を行った。その結果、300余りの1アミノ酸置換を持つ突然変異サブクローンを得た。また、これらのサブクローンを用いて形質転換用プラスミド(野生型背景)を作製した。さらに、kaiA2単一変異,kaiC15単一変異,kaiA2kaiC15二重変異はそれぞれ、長周期、正常周期、正常周期を示し、kaiC15がkaiA2のサプレッサー変異となっている。これらの遺伝的背景に新たな変異を導入した形質転換用プラスミドのセットも上記のサブクローンについてほぼ全て作製した。さらに、その一部について生物発光概日リズムを測定した結果、少なくとも2割の突然変異において周期異常を引き起こすことがわかった。 また、これらの時計因子の振動発生メカニズムの解析から、試験管内での概日リズム発生に成功した。周期異常突然変異を持つタンパク質の解析から試験管内でのリズムと細胞内でのリズムがパラレルであることを明らかにした。これらの結果から、細胞のもつ概日リズム周期を決定するメカニズムが基本的にKaiA,KaiB,KaiCだけで構成されるシステムであることを示唆した。本研究課題はこれら3つの時計因子のみを仮定した概日周期決定システムをターゲットにしており、このストラテジーの妥当性をサポートする結果を得られたと考えられる。
|