研究概要 |
本年度は藍色細菌の概日時計遺伝子kaiA,kaiB,kaiC遺伝子座での遺伝的ロバストネスを検証するため、ランダムな点突然変異体の表現型解析を行った。300余りの1アミノ酸置換を持つ突然変異サブクローンを用いて形質転換用プラスミド(野生型背景)を作製した。それらの生物発光概日リズムを測定し、周期表現型に注目して解析を行った。kaiC遺伝子内の変異に注目すると、リズムを保持した多くの変異体が24〜28時間の周期を示すことから、この範囲に周期をとどめる遺伝的ロバストネスを野生型kaiC遺伝子が持っていることが示された。さらに、他の遺伝子・遺伝子背景について解析を進めている。 また、細胞内における概日時計システムを調べた結果、KaiABCからなる振動体の下流でlabA遺伝子が機能することを明らかにした(Taniguchi et al. 2007,)。同様に下流で働くsasA遺伝子との遺伝的相関も明らかにした(Takai et al. 2006)。これらの結果はKaiABC振動体の細胞内での安定な周期発生機構を解明する上で基礎的な知見となる。さらに、試験管内で実現できるKaiABCタンパク質振動体の安定な発振機構をタンパク質間相互作用の点から解析した(Kageyama et al. 2006)。遺伝的ロバストネスという概念的な尺度をタンパク質相互作用という実体を有する尺度へ変換できる可能性を示唆した。これらの成果は、時計遺伝子突然変異のシステム安定性に対する評価を細胞時計と試験管内時計の両面から多角的に評価できる可能性を示唆している。
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