研究概要 |
本年度は藍色細菌の概日時計遺伝子kaiA, kaiB, kaiC遺伝子座での遺伝的ロバストネスを検証するため、ランダムな点突然変異体の表現型解析とデータの統合的解析を行った。300余りの1アミノ酸置換を持つ突然変異体の生物発光概日リズムを測定し、周期表現型に注目して解析を行った。kaiA, kaiB, kaiC遺伝子内の変異の影響を比較すると、kaiA内の変異は他の2遺伝子と比較して、周期への影響を非常に少ないことが明らかになり、3つの必須遺伝子で遺伝的ロバストネスに大きな違いが生じていることを示した。また、kaiB, kaiC内の9割以上の変異は正常範囲の周期を逸脱させることを明らかにし、周期長に関する限り、両者の遺伝的ロバストネスがこれまで解析されている他の遺伝子・システムに比べて、著しく低いことを示した(論文準備中) また、細胞内における概日時計システムのロバスト性を生みだす分子機構として、時計タンパク質間の相互作用による同期現象を明らかにするとともに(Nat Struct Mol Biol)、細胞内での時計遺伝子とそのタンパク質産物間のフィードバック制御様式を明らかにした(J Bacteriol)。また、周期については、KaiCのもつATP分解活性そのものが、振動数(周期の逆数)と比例関係にあることをしめし、ロバスト性は時計タンパク質内の性質に大きく依存していることを示した(Proc Nat Acad Sci USA)。
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