研究概要 |
詳細な塩基配列が決定されたヒトゲノムの情報をもとに,現在では,SNP(単一塩基多型),マイクロサテライトDNA多型,Alu挿入多型などのDNA多型データが,日本人を含めて,いくつかの人類集団で蓄積している。本研究では,多数の常染色体ゲノム領域に対して,東ユーラシアにおける日本人集団の系統関係を解明することを,目的とした。本年度(平成17年度)は、研究代表者および研究協力者が有するアジア集団のサンプルについて、Alu挿入多型とマイクロサテライト多型を中心に検索した。また,アイヌ人集団と沖縄人集団で湿型頻度の高いことが昔から知られている,耳垢遺伝子のある第16番染色体の特定領域についても,異なる集団の移住パターンを推定できる可能性があるので,そちらも重点的に調べた。その結果、耳垢遺伝子のDNA多型は、中国北部と韓国では乾型遺伝子で固定している一方、中国南部集団では湿型の頻度が日本人集団よりも高かった。Alu挿入多型35座の場合には、日本人集団は中国北方の集団とより近縁だったが、マイクロサテライト多型105座の場合には、逆に日本人集団は中国南方の集団とより近縁だった。今後、これらのデータを総合的に検討し、また新しい多型遺伝子座を検索する必要がある。
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