研究概要 |
座姿勢のヒトが,上下方向の振動により,「消極的快」と「積極的快」の2種類の「快」を感じることが示唆された。低周波の0〜4Hzと比較的高周波である8〜10Hzの両振動周波数において観測された「消極的快」は,「安心感」と「満足感」の増加に関連があり、逆に「覚醒感」とは負の関係があることが確認された。一方,3〜9Hzで観測される「積極的快」では,「はつらつ」と「さわやか」と表現される感覚が誘発されることがわかった。個体差はあるが,一般的に座姿勢のヒトにとって"最も不快な上下方向の振動である"とされる振動領域が3Hz付近から5Hz付近にあるとされていることと今回の実験結果を付き合わせると,この「不快」と「積極的快」とが全く同じ領域に混在しているとする矛盾した結果を導くことになった。このことを踏まえ,現時点では,「不快」と「快」は別の次元,言い換えると異なる軸で取り扱う必要があることが示唆されており,この関係を本研究テーマの最終年度において明確にする予定である。この他に,今年度の予備的実験の実施,専門家との研究討議,文献調査を通して,「不快」,「快」の両方において「個体差」を直接的に扱うことの必要性を再確認することができた。当然のことではあるが,"平均的な傾向"のみでは求めようとしている本質的な"快"を適切に表現することは困難であることが再確認された。この「個体差」を解決する一つの方法としては,肘関節の不快感を表現する既存の手法概念のコアにある個体ごとの「最大不快値」(被験者が最も不快であると感じる外的もしくは内的パラメータの値)による不快関数の標準化が一つの重要な考え方であることが理解できた。
|