研究概要 |
振動環境におけるヒトの"快"を心理,生理,物理特性の両面から解明するために,ロッキングチェアによる自発的振動実験(揺動実験)と垂直方向に一軸加振機に取り付けられた自動車用シートによる正弦波強制振動実験(強制振動実験)を実施した.先に実施した揺動実験により確認された「消極的快」の存在が,強制振動実験において観測された「消極的快」と「積極的快」の2種類の「快」の存在より,再度確認することができた.「消極的快」は低周波の0-3Hzと比較的高周波の8-10Hzで感じられ,特に0-1Hzのゆったりした振動において「消極的快」であると判断される傾向にあった.一方,「積極的快」は3-9Hzの身体が大きく揺れる振動において感じられていたが,これまでの研究では,この周波数帯ではヒトは不快を感じると結論付けられている.また,「消極的快」の場合,最高血圧は「満足感」と「安心感」で有意に負の相関を(p<0.05),最低血圧は「落ち着き感」「満足感」で負の相関を,「はつらつ」「覚醒感」で正の相関(p<0.05)を示すことが求められた.一方,「積極的快」刺激の場合,最低血圧が「安心感」(p<0.05)と「快」(p<0.01)が有意に正の相関を示した.本実験を通して,振動によって「消極的快」と「積極的快」の両方が誘発されることが示された.また,「消極的快]と「積極的快」の出現は振動周波数に影響されることが明らかとなった.特に,揺動刺激下(揺動実験)の評価では瞬目率,副交感神経活動,最低血圧が重要な指標であること,また「消極的快」における評価には「血圧」が有効な指標の一つであることが確認された.最後に,本実験を通して,振動暴露時間の累積効果が少ないとみなされる振動環境においては,振動を「快因子」として捉えることも可能であることを示唆することができた.
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