研究概要 |
【研究のねらい】 高齢者,障害者も含めた多種多様なヒトが,より適応しやすく,使いやすい(身体的,精神的な努力が少ない)操作機器を設計するためには,実際の操作姿勢におけるヒトの力覚特性を考慮することが必要である. そこで本研究課題では,実際の操作姿勢(産業車両,自動車)における,比較的ゆっくりとした上肢の操作を対象とし,力覚の基本特性(能動的に発揮する力の大きさの感覚,受動的な重さの感覚,力の弁別閾など)の個人差(年齢,性別,人種)を明らかにする.さらに力覚から見た「使いやすさ」の評価を試みる.ここではヒトが正確な操作や,力を弁別するために必要とする精神的な努力を含め,全身の反応(物理刺激-生理反応-心理量)として「使いやすさ」を検討する. 【平成18年度の実績】 20〜30歳代の男女各10名(計20名:人材派遣)を対象に,右手による並進力とトルクの最大,最小発揮力と,目標値に対して主観的な数倍の発揮力を計測し,以下の検討を行なった. (1)感覚特性(Weberの法則,Weber-Fechnerの法則)について ⇒最小発揮力はWeber則の特徴を示した.一方,主観的な発揮力は,目標値に対して,数倍の大きな力を発揮する場合と,目標値以下の場合に分かれ,Weber-Fechnerの法則の特徴である感覚量と実測値の関係が指数関数になる要件を満たさなかった(成り立たない可能性あり). (2)力の方向依存性と性差について ⇒力を出しにくい橈屈方向は最小発揮力が大きく,最小発揮力は男性よりも女性においてやや大きい結果を得,国際生理人類学会(2006年10月)にて発表した.高齢者特性の追実験として,40〜60歳代の男女各9名(計18名:人材派遣)のデータを計測した.平成19年度はこのデータを解析し,年齢差について検討する予定.なお平成19年に迅速に研究を遂行するため,前出しで力センサーをレンタルし,力計測装置を設計する必要が生じた.そこで物品費および謝金をレンタル費に流用して対応した.
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