研究概要 |
アブラナ科植物B.campestris(syn.rapa)の自家不和合性は、1遺伝子座S複対立系によって制御されており、S遺伝子の表現型が雌雄で一致したとき、自己花粉が拒絶され、受精に至らない。この現象は、柱頭上での自己・非自己の認識反応である。しかしながら、花粉と柱頭との認識反応には、この自家不和合性以外にも、自分とは異なる種を排除するなどの様々な認識システムの存在が考えられているが、その実態は明らかでない。 自己・非自己を決定するS遺伝子の実態を明らかにする過程で、異なるS遺伝子表現型であるにもかかわらず、特定の個体がトルコ集団由来の系統の花粉を排除することを発見し、この現象が、S遺伝子座とは独立の1遺伝子によって制御されていることを明らかにした。この原因遺伝子を単離・解析を目的とする。 今年度は、その雌雄の因子単離を目指して、分子マーカーの単離を行った。花粉側については、2,000AFLPprimerを実験したところ、2つの連鎖するマーカーを単離できた。現在、そのマーカー間の位置関係などを詳細に検討している。また、連鎖したマーカーから、原因遺伝子に到達するために、BACライブラリーを構築する必要があったが、共同研究を行っている奈良先端大の高山教授のグループが有しているものを利用可能であることが明らかにできた。雌ずい側因子については、遺伝学実験で、昨年の秋の実験と今年度の一致がみられず、再度、来年度実験を行うこととした。 この様に、一側性不和合性を制御する遺伝子単離に向けて、順調に研究を開始できた。また、自家不和合性の優劣性の分子機構を明らかにできたことは、今年度の付加的であるが、大きな進展であった。
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