研究概要 |
DNAマイクロアレイを用いてエピジェネティック矮性形質の発現に関与する遺伝子の同定を進めた結果を元に、変異体における、Oryza sativa germin-like protein 2(GER2)遺伝子の転写量の増加、また、Cucumis sativus extensin-like protein(EXTL)遺伝子、Arabidopsis thaliana cell cycle control crn(ccc)protein-like遺伝子、Oryza sativa putative soluble starch synthase(sss)II-3遺伝子などで転写量の減少をRT-PCR法により解析した。更に、イネのチトクロムP450がブラシノステロイドなどの生合成に関与することから、この遺伝子に着目した。イネには、環境因子により誘導される誘導型P450分子種の存在が考えられるが、これまでイネの誘導型P450分子種に関する報告はない。また、イネP450遺伝子の欠損により矮性変異体などが得られていることも興味深い。そこで、イネから誘導型P450cDNAをクローニングし、それらの代謝性能について解析を行った。イネからmRNAを調製し、逆転写酵素により一本鎖cDNAを調製した。次に、CYP72A18cDNAまたはCYP72A21cDNAを特異的に増幅するPCRプライマーを作製した。その結果、CYP72A18は薬剤処理によって遺伝子発現が3倍まで誘導された。次に、CYP72A18cDNAまたはCYP72A21cDNAを酵母発現用プラスミドpAAH5Nのアルコール脱水素酵素プロモーターとターミネーターの間に順方向に挿入したP450発現用プラスミド、pA72A18とpA72A21を作製し、酵母でのP450分子種の発現を試みた。その結果、CYP72A18とCYP72A21の酵母ミクロソーム画分での発現は、各々25pmo1/mgタンパク,20pmo1/mgタンパクであった。これらにより、P450を介した遺伝子発現抑制機構が、矮性の表現型の発現に一部関与している可能性が示唆された。
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