研究概要 |
本研究は,ダイズの莢先熟現象の発生機構の解明を目的として,作物の生育をシミュレートするモデルを構築し,それに既知の莢先熟関連遺伝子の影響を遺伝子型パラメータとして組込むことで,遺伝子・環境相互作用を量的に明らかにするとともに,新たな遺伝子領域の探索を試みるものである.本年は,以下の研究を実施した. 1.モデルの構築 品種タチナガハを対象にして,好適条件における生育および子実収量を日長,温度および日射条件にもとづいて予測するモデルの基本骨格を作成した. 2.モデルの拡張 京都大学農学部附属京都農場にて,Stresslandとタチナガハを2作期(5月播種,6月播種)で群落栽培し,主に群落生産機能および光合成特性の調査を行った.得られた結果を解析し,上述のモデルに反映させるべき品種特性パラメータ(光合成機能,群落吸光係数)を得た.それらを考慮した群落光合成モデルは圃場における乾物生産量の変異をよく表していた. 3.Stressland×タチナガハF4系統の育成および遺伝子型調査 既に育成しているF2約700系統の中から,開花期,成熟期,伸育型,莢先熟程度,乾燥時のストレス反応の表現型にもとづいてF3世代300系統を選んで圃場栽培した.それらを世代促進するとともに,その一部を対象にして葉身DNAのPCR分析を実施し,伸育性の主働遺伝子座(Dt1)に関する遺伝子型を推定した.その結果から,Dt1座の優性および劣勢ホモ各10系統を翌年以降に供試する材料として選定した.
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