研究概要 |
本研究は,ダイズの莢先熟現象の発生機構の解明を目的として,作物の生育をシミュレートするモデルを構築し,それに既知の莢先熟関連遺伝子の影響を遺伝子型パラメータとして組込むことで,遺伝子・環境相互作用を量的に明らかにするとともに,新たな遺伝子領域の探索を試みるものである.本年は,以下の研究を実施した. 1.モデルの改良に必要な莢先熟発生スキームの構築 品種タチナガハを用いた圃場試験結果から,莢先熟程度が様々に異なるダイズの子実肥大期間における生育過程を解析し,莢先熟の発生程度が子実肥大期間前半の栄養体・莢実間乾物分配比を強く反映すること,および同期間の導管液中サイトカイニン輸送量と密接な相関を示すことを明らかにした(佐藤ら,2006).これらの知見は,ダイズの生育モデルの改良に必要な,莢先熟発生スキームの構築の重要な基礎となるものである. 2.Stressland×タチナガハF4系統の圃場調査およびF5世代の育成 昨年度,Dt1座遺伝子型によって分類したF4系統(有限伸育型12系統,無限伸育型6系統)を圃場栽培し,子実肥大期間における葉形質の推移および莢先熟発生程度を調査した.莢先熟発生程度は,各伸育型グループ間で明瞭に分かれた。一方,Peking×タマホマレ交配由来のPILsを用いたQTL解析も合わせて行ったところ,莢先熟発生について過年度と同じくDt1座のみにQTLが検出された。また莢先熟性と主茎の伸長程度の間に密接な関連が見い出された。これらより,莢先熟性に対するDt1座の関与が極めて強いものであることがわかった。
|