研究概要 |
本研究は,ダイズの莢先熟現象の発生機構の解明を目的として,作物の生育をシミュレートするモデルを構築し,それに既知の莢先熟関連遺伝子の影響を遺伝子型パラメータとして組込むことで,遺伝子・環境相互作用を量的に明らかにするとともに,新たな遺伝子領域の探索を試みるものである.本年は,以下の研究を実施した. 1.莢先熟性の品種間差異の要因の解明 前年までに表現型調査を行なってきたPeking×タマホマレ交配由来のPILsから、莢先熟発生程度が顕著に異なる3系統を選抜し圃場栽培した。それらの子実肥大期間における生育過程を解析したころ、莢先熟の発生程度の品種間差異は、その環境的変異と異なり子実肥大期間の前半の栄養体・莢実間乾物分配比を強く反映しなかったが、同期間の導管液中サイトカイニン濃度ならびに輸送量とは密接な相関を示すことが明らかになった(佐藤ら,2007). 2.Stressland×タチナガハF5系統の圃揚調査およびF6世代の育成 昨年度,Dt1座遺伝子型によって分類したF5系統(有限伸育型27系統,無限伸育型36系統)を圃場栽培し,子実肥大期間における莢先熟発生程度を調査した.莢先熟発生程度は,各伸育型グループ間で明瞭に分かれ有限伸育型で多く発生した。さらに、両グループ内およびグループ間の変異を通じて莢先熟性と1粒重との間に相関がみとめられ、Dt1座以外の莢先熟性関与遺伝子として粒大関連遺伝子が新たに挙げられる可能性が示唆された。
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