研究概要 |
本研究は,ダイズの莢先熟現象の発生機構の解明を目的として,作物の生育をシミュレートするモデルを構築し,それに既知の莢先熟関連遺伝子の影響を遺伝子型パラメータとして組込むことで,遺伝子・環境相互作用を量的に明らかにするとともに,新たな遺伝子領域の探索を試みるものである.本年は,以下の研究を実施した. 1. 莢先熟性の遺伝的差異と木部液サイトカイニン濃度との関連 Peking×タマホマレ交雑由来RILs (F11)から選抜した莢先熟易系統(PT45),同難系統(PT30),および同中程度(PT33)を圃場栽培し、子実肥大初期に主茎基部から採取した木部液サイトカイニンの濃度を分子種別に定量した.その結果、莢先熟発生程度は、木部液中のtZ, DZ, tZRおよびDZR濃度が子実肥大盛期において高いことが関連すると思われた.同時に、シンクソース比が低い特性も,莢先熟性の系統間差の一因になり得ることが示唆された. 2. 莢先熟性の遺伝的差異と莢実器官の発達ならびに莢実生長期間の窒素動態の関連 Stressland×タチナガハ交雑由来RILs (F6)系統から、Dt1座遺伝子型によって分類した有限伸育型および無限伸育型各4系統を圃場栽培し,莢実器官の発達過程および窒素分配を調査し、莢先熟発生との関連を検討した.有限型系統では莢数が多いほど、無限型系統では茎伸長と莢数増加が早く終わるほどそれぞれ莢先熟を発生させにくいことが明らかになった。
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