研究概要 |
西アフリカで非常に重要な作物であるトウジンビエPennisetum glaucumの畑には、脱粒性の雑草型トウジンビエが高頻度で発生する。これまでに,雑草型と作物型のいろいろな違いは1遺伝子座に支配されており、しかも雑草型はヘテロ接合型であることがわかっている。つまりこれは、同種内の作物と雑草の平衡多型という類例のない現象である。本研究では,この雑草型遺伝子の単離と機能の解析をめざしている。本年度は,過去に西アフリカ・マリ共和国で収集された栽培型トウジンビエの種子を播種し,我々がすでに得ている雑草型形質連鎖マーカーPgM1を用いて実生段階で検定を行い,現地で雑草型から花粉を受け取ることによって生じたヘテロ型個体を選び出して育成し,自殖種子を得た。これを播種し,735個体の分離集団を育成し,形態を調査するとともに全DNAを抽出した。この集団は作物型232個体,雑草型462個体,不稔型37個体,不明(組み換え型?)4個体からなっていた。作物型・不稔型各12個体から得たDNAをバルクとしてRAPDベースのバルク分離法を行い,作物型・雑草型それぞれの対立遺伝子に連鎖したRAPDバンドを検出することができた。これをプラスミドにクローニングし,塩基配列を決定した。一方,上記の分離集団と同一家系に属する雑草型個体を別に育成し,幼若葉組織をもとに,BACライブラリーの作成をカナダ・モントリオールのBio S&T社に委託した。これまでに重複度6のライブラリーが完成している。あわせて,当初の連鎖マーカーPgM1の配列を用いてPCRスクリーニングを行い,2個のポジティブクローンを得た。以上のように標的遺伝子周辺の連鎖地図作製および遺伝子単離に必要な準備がおおよそ整ったが,さらに高密度でマーカーを設定するために,次年度の早期に上記分離集団を用いてAFLP分析をおこなう必要がある。
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