研究概要 |
トウジンビエはアフリカやインドの半乾燥地できわめて重要な雑穀の一種である。西アフリカではトウジンビエの畑に脱粒性の雑草型トウジンビエが混生することが常態となっている。筆者らによるこれまでの研究で,作物型と雑草型のさまざまな差異は見かけ上1遺伝子座に支配されていることがわかっており,Weedinessと名付けられたこの遺伝子は実際には複数の遺伝子が緊密に連鎖した「超遺伝子」であることが推定されていた。この遺伝子をクローニングし解読することが本研究計画の最大の目標であったが,残念ながら現時点においてこれに成功していない。これまでの研究成果は以下のとおりである。 1)RAPDベースのバルク分離法によって得られた3個の連鎖バンドをクローニングして塩基配列を決定し,これをもとにCAPSマーカー3個を作出した。 2)約700個体の自殖分離集団に対してAFLP分析を行い,雑草型形質と連鎖した11個のバンドをクローニングして塩基配列を決定した。 3)分離集団中で非典型的な表現型を示した7個体のマーカー型を調べた結果,超遺伝子内での組み換え型であることが推定された。 4)雑草型トウジンビエの未展開葉から重複度5のBACライブラリー(名目重複度8のクローンプール)を構築し,雑草型形質と連鎖した2個のBACクローンを得た。 5)集団の遺伝構造モデルを作成する上で必須となる,現地における他殖率を推定するため,現地で収集された穂から育成した集団について形態とマイクロサテライトを分析した。他殖率は作物型個体について95%,雑草型個体について85%と推定された。また,現地集団における雑草型対立遺伝子の頻度は6%と推定された。
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