研究概要 |
アスパラガス(Asparagas officinalis L.)の'Gold Schatz'2系統のうちの1系統(GS#2)は花器官のホメオティック変異系統であり,もう一方は野生型系統(GS#1,雄性)である。GS#2は,whorl 3の位置に心皮状の器官を形成する。ノーザンハイブリダイゼーションによる解析で,GS#2の花芽では,AOGLOAおよびAOGLOBの発現が見られないことに加えて,AODEFの発現も極めて低いことが明らかとなった。アスパラガスの花では,試料の発育が不揃いであるため,斉一な発育ステージの花芽を集めることが困難である。そこで,発育初期の花芽についてin situ ハイブリダイゼーションによる解析を行なった。その結果,AODEF遺伝子は,発育初期では発現しているがその後発現しなくなること,AOGLOはごく初期から発現していないことがわかった。 GS#2については,導入の経緯が不明であるため,遺伝学的な性が不明であった。形態的な特徴から性が推定出来ないのは,花器官のホメオティック変異による。そこで,アスパラガスの雌雄性を判定する分子マーカー(Jamsari et al. 2004)を用いてGS#2の雌雄性を判定した。その結果,この系統は遺伝的に雌性であることがわかった。このマーカーを用い,いくつかのアスパラガス株について雌雄の判定を行った結果,花の形態から判断される性との間に矛盾は認められず,その有効性が確かめられた。 GS#2の事例はMADS-Box遺伝子と性発現が必ずしも無関係でないことを示唆した。そこで,MADS-box遺伝子の発現と花の雌雄性発現との関連を調べるために,遺伝子導入方を検討した。アスパラガスへの遺伝子の導入法として,Agrobacteriumの感染を利用する方法が報告されているが,安定した技術として確立されるには至っていない。方法を確立するため,選択マーカーとして薬剤耐性遺伝子,レポーター遺伝子としてGUS遺伝子を用い,アスパラガス懸濁培養細胞へのAgrobacteriumの感染を介した遺伝子導入を試みた。その結果,処理したアスパラガス細胞でのGUS遺伝子の発現が確認された。
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