研究概要 |
アスパラガス(Asparagus officinaiis L.)の単性花は,花器官の発育不全によって生ずる。すなわち,雌花はWhorl3における花器官の発育不全とWhorl4における花器官(雌蕊)の成熟によって形成され,雄花はWhor14における花器官の発育不全とWhorl3における花器官(雄蕊)の成熟によって形成される。アスパラガス‘Gold Schatz'の系統'GS2'(GS2)はホメオティック変異系統であり,単性花の形成過程でおこる花器官の発育不全と成熟を解析するための貴重な研究素材である。しかし,形態変異の仕組みは不明である。そこで,GS2を雌性親,‘Mary Washington500W'(MW)雄性株を野生型雄性親として交配し,得られた種子から実生個体を育成することによって,後代における花の形態とMADS-box遺伝子AODEF, AOGLOA, AOGLOB, AOAG1, AOAG2の発現を解析した。発現解析は各遺伝子の部分配列をプローブとした定量PCRにより行った。その結果,後代には典型的な花の形態を持つ雌性個体と雄性個体のみが出現し,ホメオティック変異を示す個体は出現しなかった。一方,GS2で見られたクラスB遺伝子の発現低下は,後代アスパラガス個体の花では観察されず,これら遺伝子の発現が後代において回復することが明らかとなった。以上の結果から,GS2の花におけるホメオティック変異は遺伝的形質として劣性であること,Whorl3における花器官の形態変異と発育不全の回避は,互いに密接に関係しているらしいことが示唆された。
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