研究概要 |
カロチノイドとアントシアニンはスカシユリ花弁における主要な色素であり、これらの色素発現の遺伝的な背景を明らかにすることは育種の効率化に役立つと期待される。 花弁にカロチノイドを蓄積する黄花の品種‘コネチカットキング'は花弁にアンスラキサンチン、ビオラキサンチン、ルテインを主に含むことが分かった。‘コネチカットキング'より、これらの色素の合成と分解にあずかる遺伝子を単離した。合成にあずかる構造遺伝子としてPSYa, b、PDS、ZDSa, b、CRTISOa, b、LCYBa, b、HYB、ZEP及びLCYEを単離した。多くの植物種ではこれらの構造遺伝子は原則シングルコピーであるとされているが、ユリでは他の植物種と異なり、基本的に2コピーずつ単離された。さらに花弁におけるカロチノイドの分解(酸化的開裂)に関わる遺伝子としてCCD4を単離したところ、少なくともユリでは5コピー存在することが分かり、これもキク(2コピー)など他の種よりも多かった。これらの遺伝子の器官特異的発現と品種間差異を調査した。 スカシユリはアントシアニンとしてシアニジンルチノシドを有している。アントシアニン合成を制御する転写調節遺伝子としてbHLH1と2を花弁より単離した。これらはいずれも花弁で発現が認められたが、発現量はbHLH2の方が高く、また、bHLH2の発現量の変化はアントシアニンの蓄積量の消長とよく対応したことより、bHLH2がアントシアニン合成を調節しているbHLH遺伝子であると考えられた。bHLH1と2に品種間差異は認められなかった。
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