キク'ピアト'は開花のためには短日条件を必要とするが、CSVdが感染すると長日条件下でも開花することをこれまでに認めた。また、CSVdが感染したキクにおいてsiRNAが存在していることを認めた。このことはCSVd分子が生体内で分解されていることを示すものであり、この分解産物がキクの生態反応に影響を及ぼしている可能性も考えられた。'I-69-8'および'セイヴィスタ'を用いて形質転換を行った。形質転換にはキクわい化ウイロイド(CSVd)の1-120ntまでの120bpをイントロン配列を挟んでセンスとアンチセンス方向に組み込んだsiRNAベクター(1)、および1-120ntの120bpをセンス方向に組み込んだベクター(2)を用いた。両ベクター共に'I-69-8'では形質転換が作出できた。作出した'I-69-8'に関しては、CSVdに対する形質転換系統の反応性を確認することを目的として以下の実験を行った。'I-69-8'の形質転換系統を穂木としてCSVdに高保毒の'ピアト'を台木として接ぎ木を行った。接ぎ木5か月後に穂木のCSVd濃度を調査したところ、ベクター(1)を形質転換した1系統とベクター(2)を多質転換した2系統で明らかなCSVd濃度の変動が見られた。つまり、これらの系統ではCSVd濃度が一端上昇した後に、CSVd濃度の低下が見られた。また、siRNA誘発遺伝子を組み込んだ1系統において葉でのCSVdの局在性がみられた。CSVdの局在性はCSVd抵抗性を示す指標であることをこれまでに認めている。これらのことはCSVdが組み込んだRNAによって分解されている可能性をも示唆するものであるが、分解産物であるsiRNAの確認を行う必要がある。また、これらの系統は開花反応に特に違いは見られなかったため、今後は形質転換系統を台木とした'ピアト'の開花反応を調査する必要がある。
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