研究課題
基盤研究(B)
細胞壁は、植物の物理的特性の源であり、果実の肉質と微生物侵入(腐敗)への抵抗性を決定している。したがって、細胞壁分解は果実の食味と日持ち性の支配的因子である。これまでの研究で果実の成熟・軟化にエチレンが重要であることは示されたものの、実際の細胞壁分解における鍵因子は未だに解明されていない。そこで、本研究では、成熟に伴って顕著に果実硬度が低下するセイヨウナシおよびメロン果実と多量のエチレンを生成するにもかかわらず軟化しないチュウゴクナシ果実を用いて、ポリガラクチュロネース、アラビノフラノシデースおよびβ-ガラクトシデースの関与を検討するとともに、プロテオーム解析および酵母シグナルシーケンストラップ法(YSST法)によって網羅的に細胞壁タンパク質および関連遺伝子を解析した。二次元電気泳動によって、セイヨウナシ果実細胞壁で発現する約500個タンパク質の分離を行った。その結果、約200個のタンパク質分離に成功し、さらに1-MCP処理果実及びチュウゴクナシとの比較において、果実軟化と並行的な挙動を示す3種のタンパク質を見いだした。セイヨウナシ果実からインベルターゼ欠損酵母を利用したYSST法によって、約700個の細胞壁関連遺伝子断片をクローニングした。得られた全ての遺伝子断片の塩基配列を読み取り、アミノ酸配列を推定し、約70のコンティグと100個のシングルトンを得た。これらの情報を遺伝子データベースに送り、Blast検索を行い、アノテーションを行ったところ、約8割のクローンには何らかのアノテーションが得られたが、残りは対応する遺伝子情報が無く新規性の高いクローンと思われた。得られたクローンを用いてDNAアレイを作成し、遺伝子発現特性を網羅的に解析した。その結果、セイヨウナシの軟化に伴って顕著に発現が増加または減少したクローンが28個得られた。この中には、11種の新規性の高い細胞壁関連因子が含まれており、これらが果実軟化の重要な鍵因子候補である。
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日本食品保蔵科学会誌 (印刷中)
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