研究概要 |
イネいもち病は、我が国の重要穀物であるイネの最重要病害であるが、これを引き起こす病原糸状菌Magnaporthe oryzaeは、その経済的重要性から植物病原糸状菌としては初めて全ゲノムが決定された。ポストゲノムにおける本菌の遺伝子機能の解明のために、本研究ではRNAサイレンシングの適用を試みている。 本年度は、二つの向き合うプロモーターによるサイレンシングベクターpSilent-Dualを用いて、いもち病菌ゲノムに存在するカルシウムシグナリングに関与する遺伝子37個をサイレンシングさせた。解析対象の遺伝子は、カルシウムポンプ、CAM結合蛋白質、カルモジュリン、カルシウムトランスポーター、カルシニューリンなどであり、各遺伝子3〜5個のサイレンシング株を解析した。サイレンシングの程度は、得られた形質転換体により様々であったが、ノーザン解析により強サイレンシング株を選抜し、表現形の調査に供試した。その結果、37個の遺伝子のうち、26個が菌糸成長に、35個が胞子形成に、また15個が病原性に関与していることが明らかとなった。この中で、Pmc1-,Spf1-,Neo1-様のカルシウムポンプ、calreticulin様蛋白質、またcalpactin heavy chain様蛋白質といった遺伝子が、本研究により初めて植物糸状菌の病原性に関与することが明らかとなった。
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