研究課題
植物病原菌のRalstonia solanacearum(青枯病菌)はナス科植物の根から侵入し、細胞間隙で増殖したのち、導管壁を酵素により溶解し導管内に侵入する。その後、導管内で細胞外多糖を大量に分泌することで、導管を閉塞させ植物を枯死させる。我々は、導管に侵入するまでを感染初期過程と考え、その間における病原性関連遺伝子の発現様式について研究を行った。特に、無菌的に生育させたシロイヌナズナと青枯病菌を共培養することで、感染初期過程を再現する系を開発し、実験を行った。その結果、1.青枯病菌が植物宿主細胞とコンタクトした後、植物からの何らかのシグナルを受けて、病原性関連遺伝子の中でもHrpBによって支配されるhrpレギュロンの発現が著しく増加することが明らかとなった。2.その結果、青枯病菌の病原性因子の分泌機構であるtype IIIタンパク質分泌系が構築され、エフェクタータンパク質が分泌される。特定のエフェクタータンパク質の同定にはいたっていないが、青枯病菌の増殖を促進するものがあることが明らかとなった。3.同時に、細胞壁の分解酵素であるポリガラクチュロン酸分解酵素も増加することが分かった。4.青枯病菌の増殖の結果、菌体濃度が上昇し、quorum sensingによってhrpレギュロンの負の調節因子PhcAが活性化されることを見いだした。活性化されたPhcAはhrpレギュロンを止めてしまう。また、PhcAはポリガラクチュロン酸分解酵素遺伝子の発現も抑制する。すなわち、感染後期に移行する体制が整ったことになる。5.PhcAによるhrpレギュロンの抑制は、1で示した植物シグナル伝達系を構成する遺伝子のうち、prhIRの発現を抑制することによって起こることを明らかにした。PhcAはprhIRのプロモーター領域に結合し転写を抑制することも見いだし結合領域を明らかにした。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (5件)
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