研究課題
植物病原菌のRalstonia solanacearum(青枯病菌)はナス科植物の根から侵入し、細胞間隙で増殖したのち、導管壁を酵素により溶解し導管内に侵入する。その後、導管内で細胞外多糖を大量に分泌することで、導管を閉塞させ植物を枯死させる。我々は、導管に侵入するまでを感染初期過程と考え、その間における病原性関連遺伝子の発現様式について研究を行った。1.シロイヌナズナと青枯病菌の共培養を昨年度用いたが、培地組成を酸性にすることで、植物なしでも感染初期過程を再現できることを明らかにし、この系を用いて実験を行った。hrpレギュロンの構成オペロンのひとつpopAにレポーター遺伝子としてlacZYAをつないだpopA-lacZYA融合株を親株として、ランダムなトランスポゾン挿入によりpopAの発現が減少した変異株のスクリーニングを行った。新たに見いだした培養条件ではpopAは高い発現を示すことから活性を失った変異株を容易に選択することができた。2.約50個の変異クローンのトランスポゾン挿入部位を決定し、またそれぞれの変異株のpopA発現量を定量した。その結果、1)hrpGおよびhrpGホモログ(hrpG2と命名)に変異を持つクローン。2)芳香族アミノ酸の生合成に関係した遺伝子に変異を持ち、popAの発現が野生株の半分程度に低下したクローン。3)機能未知の遺伝子にトランスポゾンが挿入されpopAの発現が完全に無くなったクローンにおおまかに大別された。3.特に1)のタイプの変異について、hrpGとhrpG2の欠失変異株を作成しpopA、hrpレギュロン全体を支配する遺伝子hrpBの発現量を定量したところ、いずれも野生株に比べて10分の1以下に減少していた。4.それぞれの変異株の宿主植物に対する病原性を調べた。以前から知られているようにhrpG変異株はは完全に病原性を失ったのに対し、hrpG2変異株は野生株よりは弱いものの病原性を保持していた。このことは同じhrpBの発現を調節する2つの遺伝子産物の機能が異なっていることを意味している。
すべて 2007 2006
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