研究課題
転写因子MHR4はエクダイソンレセプターからドーパデカルボキシラーゼ(DDC)の発現に至るエクダイソンカスケードの中心部に位置しており、我々は、MHR4は昆虫の皮膚の硬化を引き起こすのに重要なDDCの発現を阻害する事を既に見い出している。MHR3はMHR4の阻害因子の一つであり、E75BはMHR3と結合する事によりその阻害作用を打ち消す働きがある事を見い出した。またE75のCとDのアイソフォームをクローニングして、幼若ホルモン(JH)によるそれらの発現制御機構を明らかにした。転写因子BHR4(MHR4のカイコでのホモログ)の発現を制御できるBHR4の過剰発現とBHR4 RNAiのgermlineを作成した。両者共にhspプロモーターの制御下にあり、熱処理によって発現が自由に制御できる。予備実験の結果、BHR4は蝋化を正常に引き起こすのに必要である要因の一つである可能性がわかった。またBHR3の過剰発現およびBHR3 RNAiのコンストラクトの作成を完了した。タバコスズメガ終齢幼虫が絶食に反応する事により、過剰幼虫脱皮を起こす性質を利用して、JHがprimordiaから成虫原器への形態分化を阻害するという、全く新しいJHの作用機構を明らかにした。またインスリンシグナル経路は人を含む全ての生物にとって重要な発育成長の経路であるが、この実験系により栄養に作用されない、インスリンシグナル経路以外の経路が存在することを発見する事が出来た。すなわち、最終齢幼虫における成虫原器は、JH阻害を受ける形態形成発育と、摂食による形態形成発育との2つの制御を受けている事を明らかにした。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Science 312
ページ: 1385-1388
Developmental Biology 295
ページ: 623-632