研究概要 |
主要果樹3種(カキ/カンキツ/ブドウ)圃場と周辺でのカブリダニ類(和名カブリダニ部を以下省略)の発生状況を調査し以下の所見を得た。 1.カキ圃場の下草管理がカブリダニの発生種、個体数に与える影響を明らかにするため,奈良県のカキ圃場に除草区と下草放任区(草生区)の2つの区を設けた。カキ樹上にはファイトトラップを,樹下の地表にはインゲントラップを設置し,種と個体数を調べた。インゲントラップに捕獲された種はケナガとニセラーゴで,両種の捕獲数は草生区のほうが多かった。ファイトトラップで捕獲された種はニセラーゴとホッカイが大半で,両区の捕獲数には有意な差が認められなかった。両区ともにカキ樹上にはハダニがほとんど発生しなかったためにケナガは樹上では観察されず,下草から樹上への移動はないと思われた。 2.九州各県のカンキツ園および自然植生のクズにおいてカブリダニ類の発生状況を調査した。慣行防除カンキツ園ではミヤコが優占していたが,クズでは,ナミハダニやカンザワハダニの有力天敵であるケナガのほうがミヤコよりも採集個体数が多かった。ミヤコの発生が観察されたカンキツ園の近傍ではクズでも本種が採集される場合が多く,周辺環境と本種の発生に何らかの関係がある可能性が示唆された。また,日本未記録属の新種ヨコアミPhytoscutus japonicuおよび日本未記録種のトランスバールTyphlodromus transvaalensisが新たに発見された。 3.ブドウ、カキの重要害虫アザミウマ類やハダニ類を制御するため,在来カブリダニ相を調査して利用可能な種の探索を行い,それらを活用した実践的な管理技術の確立をめざした。ブドウとその周辺に栽培した青刈りダイズ上で発生した在来種キイは,ブドウ葉片に接種したチャノキイロアザミウマを捕食し,平均産卵数も3.4-4.4に達し,有力な捕食性カブリダニであった。カキ樹上に殻置した面ファスナーを用いたファイトトラップ(2.5×10cm)で種を調査したが,捕獲数はきわめて少なかった。
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