研究概要 |
20Eによる細胞死に関する初期遺伝子の内、残っていたE74をクローニングし、次いでその発現動態を調べた。その結果、細胞死の決定と時期を同じくして発現するのは、E74Bで、20Eによる死の実行にはE74Aが関与していることが示唆された。これは、培養系における濃度依存発現応答における至適濃度からも推察される。これで、EcR,usp,E74,E75,BHR3,BRCの各isoform全ての発現動態と20E応答性が明らかとなり、その階層的支配がタバコスズメガの表皮におけるDDC発現調節の上流域と告示していることが明らかとなった。 膜受容体のクローニングについて、一定の方向性を示唆する結果を得た。受容体がGタンパク質共役型受容体(GCRP)であることを想定し、薬理学的手法により検証した結果、GCRPである可能性が十分あることがわかった。また、これに共役している因子として、恐らくGqタンパク-PLCβ-IP3-小胞体-カルシウムイオンの初期シグナル伝達系が関与していることも、それぞれの阻害剤を用いた薬理学的手法により想定される結果を得た。カルシウムイオン以降には、タンパク質キナーゼCが関与するとの結果とCaMキナーゼが関与するとの結果を得ており、いずれか一方が積極的に関与するのか、双方が関与するのかは検討中である。キナーゼ下流にあるカスパーゼ3の精製を、抗ヒトカスパーゼ3抗体を用いて行い、微量ながら精製に成功した。現在、N末端アミノ酸配列を決める実験を行っているところである。カイコガのカスパーゼ3の分子量はヒトカスパーゼ3に比べ、約2倍と大きく、その配列分析からカスパーゼ3の進化的意味がわかるものと期待される。 膜受容体を介した20E作用として、膜不透過性エクジステロイドを合成した。これを用いて、これまでgenomic及びnongenomicと想定された系について、検討を加えた。その結果は、これまでの仮説を全面的に支持するものであった。現在、カイコガ幼虫におけるRNAiの検証を行っており、組織によっては優れて有効である事が実証されたので、この方法を用いて、nongenomic系の関与を確立する予定でいる。
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