当初の研究計画に基づき社会性ハチ類の中から主にマルハナバチ類とスズメバチ類を選択し、2年目を迎えての継続研究を実施した。また主に初年度の研究成果を中心に国内外の学会大会で発表した。 1)昨年度は、農業におけるポリネーターとして応用的にも注目されている3種のマルハナバチのフェロモンの分析を実施したが、さらに野生種5種を追加して比較分析を行い、雄蜂の下唇腺より各々の種を特徴づける多量の揮発性香気成分を検出した。特定外来生物に指定されたセイヨウオオマルハナバチは、日本在来種マルハナバチ3種と共通するフェロモン成分を生産しており、異種間交尾、交信撹乱などの生態リスクが危惧された(日本応用動物昆虫学会第51回大会講演で発表)。 2)セイヨウオオマルハナバチ新女王の体臭成分を固相マイクロ抽出法で分析した結果、特異的な成分が検出され、リスク軽減策に応用できるのではないかと考えられた(日本応用動物昆虫学会第51回大会講演で発表)。 3)スズメバチ類に関しては、主に捕食者と被食者の相互作用に介在する化学物質に関して研究を展開した。ヒメスズメバチが被食者キアシナガバチに対して忌避作用を示す物質を分泌していることが実験的に示された(日本応用動物昆虫学会第51回大会講演で発表)。 4)ニホンミツバチがスズメバチを封じ込めた発熱蜂球から発散する揮発性成分を同定し、生物検定によりその機能解析を実施した(日本応用動物昆虫学会第51回大会講演で発表)。 5)キイロスズメバチが捕食者オオスズメバチの分泌するフェロモンを感受すると非血縁コロニー間であっても協力して相互扶助的に適応度を高めているという現象を確認した(第15回国際社会性昆虫学会議で発表)。
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