初期光合成産物の挙動を同じC3植物であるイネとダイズを用いて比較した実験を行い、その結果、ダイズではイネに比較して同化直後にデンプン画分へ多量の光合成産物を分配していることが明らかになった。代謝経路自体に違いは無いと考えられることから、同化後の分配機構に種間差が存在していることが明らかになった。そこで、いくつかの光合成および初期光合成産物の挙動に関与していると想定される酵素の遺伝子の発現を詳細に解析し、生育ステージによっても有意に変動をしていることを明らかにし、さらに異なる生育ステージでの初期光合成産物の分配を詳細に調べ、遺伝子の変動と同調していることを明らかにした。ダイズで観察されたデンプンへの著しい初期光合成産物の分配は、葉の中での小器官(細胞質、クロロプラスト、液胞)間での物質分配が重要な役割を果たしていることが想定された。抽出操作中に酵素反応によって物質が変化すると、分配機構の解析は不可能であるため、非極性溶媒を用いた小器官の分離方法の開発を行なった。この手法を用いて、実際にダイズの器官内での物質の存在割合について詳細に解析することが可能となった。このような物質の存在割合を解析する時に、より詳細な情報を得るために網羅的代謝産物の(半)定量解析手法であるメタボローム解析手法の導入を試みた。十分な化合物情報と分析手法の条件が決定されているGC-MSを利用したメタボローム手法を導入し、これを利用して植物の環境応答機構の解析を進めた。また、このメタボローム手法は植物の葉のみならず、様々な組織や分泌物等についても応用可能であることを明らかにした
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