研究分担者 |
三枝 正彦 東北大学, 大学院・農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター, 教授 (10005655)
渡邊 肇 東北大学, 大学院・農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター, 助手 (10292351)
前田 忠信 宇都宮大学, 農学部附属農場, 教授 (20008022)
金田 吉弘 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教授 (30347207)
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研究概要 |
本研究では,リン酸ベースの家畜ふん堆肥施用体系(リン酸を堆肥で供給し,不足する窒素は化学肥料で捕う。)が高水準で持続的な作物生産とリン酸負荷量低減との調和に有効であるかを我が国の土壌型,土地利用方式の特徴を考慮して明らかにすることを目的とした。 1.Pベース施用体系の作物収量と土壌P蓄積量: 家畜ふん堆肥連用2年目の非アロフェン質黒ボク土圃場(東北大学)において,デントコーン(畑)と水稲(水田)の圃場試験を行った。デントコーンの収量は鶏ふん堆肥Nベース区>牛ふん,鶏ふん堆肥Pベース区>慣行区(化学肥料慣行施用区)であった。収穫期の土壌可給態リン酸含量はNベース区よりPベース区で低い値に抑制された。黒ボク水田と沖積水田(堆肥施用1年目)における玄米(ひとめぼれ)収量は鶏ふん堆肥N,Pベース区と慣行区には有意な差はなかった。作土の可給態リン酸増加量は鶏ふん堆肥Nベース区に比べてPベース区で抑制された。一方,アロフェン質黒ボク土水田(宇都宮大学)で東北大学と同一の堆肥・同一施用量で実施した試験における玄米収量(コシヒカリ)は,鶏ふんPベース区(592g/m^2)が最も高く,次いで鶏ふんN区(558g/m^2)=慣行区(553g/m^2)であった。鶏ふん堆肥Pベース区の玄米収量が高かったのは,穂数,1穂籾数,登熟歩合いずれも慣行区より高く,堆肥中のリン酸と補足した化学肥料窒素が水稲生育に効果的であったためと考えられた。 2.リン酸流出量: 沖積水田(灰色低地土)の大型ライシメーター水田において,窒素成分を5g/m^2とした家畜ふん堆肥区および化学肥料区(化成肥料全層施肥と肥効調節型肥料接触施肥)における窒素の表面流出量は区間差が小さかったが,浸透流出量は堆肥区が化学肥料区に比べて多かった。リン酸浸透流出量は0.3〜0.4g/m^2の範囲にあり区間差は認められなかった。玄米重は,接触施肥区>全層施肥区>堆肥区の順であった。
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