研究概要 |
本研究では,リン酸べースの家畜ふん堆肥施用体系(リン酸を堆肥で供給し,不足する窒素は化学肥料で捕う。)による高水準で持続的な作物生産とリン酸負荷量低減との調和しうる堆肥施用技術を検討した。 1.リン酸ベース施用体系の作物収量と土壌リン酸蓄積量 家畜ふん堆肥連用3年目の非アロフェン質黒ボク畑(東北大学)における圃場試験では,デントコーンの収量は鶏ふん堆肥Nベース区>牛ふんN, Pベース区,鶏ふん堆肥Pベース区>慣行区であった。堆肥連用3年後の土壌の全リン酸含量はPべース区でNベース区の42%に抑制された。黒ボク水田(東北大学,堆肥施用3年目)と沖積水田(古川,堆肥施用2年目)における玄米(ひとめぼれ)収量は鶏ふん堆肥N, Pベース区と慣行区には有意な差はなかった。両圃場の堆肥連用後の作土の全リン酸含量はPベース区でNベース区の39〜56%に抑制された。アロフェン質黒ボク土水田(宇都宮大学)で東北大学と同一の堆肥・同一施用量で実施した試験(連用3年目)における玄米収量(コシヒカリ)は,慣行区に比べて鶏ふんPベース区で高かった。 2.家畜ふん堆肥のリン酸組成と作物への可給性 易溶性リン酸の割合は牛ふん堆肥(65〜72%)に比べて豚ぷん堆肥(51%)と鶏ふん堆肥(約30%)で低かった。易溶性リン酸の主要形態はマグネシムと結合したリン酸であると考えられた。水稲には堆肥中の易溶性リン酸以外の難溶性リン酸も有効であることが明らかとなった。 3.リン酸流出量 沖積水田(灰色低地土)の大型ライシメー一ター水田において,窒素成分を5g/m^2とした家畜ふん堆肥区および化成肥料全層施肥,肥効調節型肥料接触施肥区における窒素とリン酸の表面流出量(表面流去+浸透)を測定した。窒素は堆肥区が化学肥料区に比べて多く,リン酸の流出量は浸透流出量は化成肥料全層施肥≧堆肥区>肥効調節型肥料接触施肥区であった。堆肥連用4年目の玄米重は,接触施肥区>全層施肥区>堆肥区の順であった。
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