研究概要 |
本研究では, リン酸ベースの家畜ふん堆肥施用(リン酸を堆肥で供給し, 不足する窒素は化学肥料で捕う。)による高水準で持続的な作物生産とリン酸負荷量低減が可能であるかを明らかにした。 1) 新しいリン酸ベースによる堆肥施用体系の有効性評価 : 本研究の成果(伊藤ら, 2007)より, 家畜ふん堆肥中の全無機態リン酸が水稲に対して有効であることから, 堆肥中の全無機態リン酸を施肥基準とした新しいリン酸ベースによる堆肥施用体系を沖積土で検討した。2007年と同様に2008年においても, 新しいリン酸ベースによる牛ふん, 鶏ふん堆肥施用は窒素ベース施用と同等以上の水稲玄米収量(品種 : まなむすめ)を確保でき, かつ窒素べースや易溶性リン酸を基準としたリン酸ベースによる堆肥施用よりもリン酸投入量を抑制できることが明らかとなった。 2) アロフェン質黒ボク土水田におけるリン酸ベース堆肥施用の残効評価 : 4年間の堆肥施用後に無施肥で水稲(コシヒカリ)を栽培した結果, リン酸ベース区(牛ふん, 鶏ふん堆肥)では化学肥料区に比べて玄米収量が増加する傾向にあり, 土壌の可給態リン酸の増加は窒素ベース区より抑制できることが明らかとなった。 3) 沖積土におけるリン酸溶出量 : ライシメーター試験によって, 60cmの土層から浸透溶出した全リン酸量は家畜ふん堆肥施用区で化学肥料区よりも増加し, 堆肥施用によるリン酸蓄積はリン酸固定力の小さい土壌ではリン酸浸透溶出量を増加させることが明らかとなった。 以上の結果より, 家畜ふん堆肥のリン酸ベース施用体系は水稲収量を確保でき, かつ土壌への過剰リン酸施用を抑制し, 耕地系外へのリン酸流出を軽減することが明らかとなった。
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