研究概要 |
根粒菌共生系のN_2O吸収還元:N_2O還元酵素遺伝子nosZを保有しているUSDA110株形成根粒のダイズ根系は、大気レベルのN_2O(310ppb)を吸収還元し、20ppb以下の濃度になることが分かった。これは、土壌中のN_2Oを根粒根圏が除去できることを示している。 ダイズ根系における硝酸由来のN_2O発生:実験室栽培ダイズに経根的に硝酸を投与し、根粒からのN_2O発生を測定した。その結果、nosZ破壊株形成根粒根系から、投与した硝酸由来のN_2O発生が観察された。野生株接種根系からは硝酸由来のN_2O発生は見られなかった。nosZと硝酸還元酵素遺伝子napA等の二重破壊株の形成根粒から硝酸由来のN_2O発生は検出されなかったので、根粒表面から吸収された硝酸が根粒バクテロイドに到達し、根粒菌の異化的硝酸還元系でN_2O発生が起こっていることが明らかとなった。 圃場の根粒根圏における微生物群集構造の解析:圃場にダイズを栽培し、圃場およびダイズ根系からのN_2O発生を調べた。その結果、根粒非着生系統ダイズからのN_2O発生は低レベルで推移したが、根粒着生系統から開花期以降顕著なN_2O発生が観察された。群集構造解析を行ったところ、Xanthomonas sp., Pseudomonas putida, Pseudomonas fluorescens, Fusarium solani, Pythium inflatumなどの細菌や真菌がN_2O発生時期の根粒根圏に生息していることが示唆された。これらの微生物は脱窒素や共生脱窒を起こすことが知られているので、根粒根圏のN_2O発生生物の可能性が考えられた。 Stable Isotope Probing(SIP)法の検討:^<13>C標識コハク酸で菌体を培養し、そのTotal DNAを塩化セシウムによる密度勾配超遠心分離を行い、^<13>C標識で密度が高くなった^<13>C-DNA画分と^<12>C-DNA画分の取得法を確立した。また、水田土壌の脱窒条件の検討を行った。
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