本研究では、土壌病害の主要な病原体である植物寄生性線虫に注目し、ゲノム情報に基づき土壌中に存在する植物寄生性線虫(病害を引き起こす直接因子)の種類と量を迅速に精度良く評価することで、線虫病害を診断する技術を開発することを目的とする。今年度は、(1)ネコブセンチュウを特異的に検出するリアルタイムPCRプライマーの作成し、昨年度までの成果と併せ、我が国における重要植物寄生性線虫であるキタネグサレセンチュウ、ジャガイモシストセンチュウを検出できるようになった。(2)神奈川県三浦市および平塚市のキタネグサレセンチュウ被害度が異なる様々な圃場から土壌を採取し、線虫を分離後、総線虫数およびキタネグサレセンチュウ密度の推定を行うとともに、一部の試料については、PCR-DGGE法により線虫群集構造の評価を行った結果、三浦土壌では0-60cmまでの土壌を対象とすることで、キタネグサレセンチュウ密度と被害度とに有意な相関が認められた。一方、平塚土壌ではネグサレセンチュウ密度と被害度には相関がなかった。しかし、平塚土壌でも発病度の高い土壌と低い土壌とでは、線虫群集構造に違い認められたことより、PCR-DGGEによる線虫群集構造解析より、発病度を予測できる可能性が示された。
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