アルミニウム(A1) イオンは根に吸着し、根の伸長を阻害する。本研究は、伸長阻害機構の解明を目的に、根の生育に必要な糖に着目し、A1の糖吸収への影響と光合成への影響を調べた。 (1)A1の糖吸収への影響 細胞伸長には、水吸収が必要であり、水吸収には駆動力として細胞内の水ポテンシャルの低下が必要である。タバコ培養細胞の細胞壁を除きプロトプラストを調製し、高張液と高張液に再懸濁することにより水の透過性を検討した結果、A1処理細胞ではコントロール細胞よりも細胞内の水ポテンシャルが増加し水吸収が低下していることを明らかにした。さらに、A1処理細胞の水ポテンシャルの増加は、培地からの糖吸収の阻害によることを明らかにした。なお、ショ糖吸収に関わるショ糖・プロトン共輸送体遺伝子の発現量は、A1の影響を受けなかった。一方、タバコ植物体の水耕栽培において、暗所での根の生育は、タバコ培養細胞同様に培地からの糖吸収に依存し、この系においても、A1は糖の吸収を阻害し根の生育を阻害する事を明らかにした。 (2)A1の光合成への影響 根の生育は、光合成による糖の供給に依存することから、根でのA1ストレスが光合成へ与える影響について解析した。地上部に^<11>Cで標識したCO_2を投与し、光合成産物の蓄積と移行をポジトロンイメージング法により解析した結果、A1により、地上部の炭素固定速度が上昇し、光合成産物(糖)の根への移行が促進される事を見出した。すなわち、根部のA1ストレスに対して、光合成をコントロールすることで根の生育をサポートしている可能性が示唆された。 (3)A1により活性化される有機酸放出機構の解析 根に転送される糖の一部は有機酸になるが、A1耐性植物種の中には、A1ストレス下の根から有機酸を分泌し耐性になるものがある。ここでは、コムギのA1活性化型リンゴ酸輸送体の構造と機能の解析を行った。さらに、タバコのクエン酸放出における光合成の関与を解析した。
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