研究概要 |
コレステロールエステラーゼ(CHE)はコレステロールエステルの3位のエステル結合を加水分解する酵素である。これまでに我々は、放線菌Streptomyces sp.X9株(X9株)を分離し、本菌から放線菌以外のCHEとは一次構造上の相同性を示さない極めてユニークなCHEを見出した。本年度は、さらに、S.avermitilis及びS.griseusのCHEを精製したところ、これらのCHEの性質はX9株のそれと類似していた。S.avermitilis由来のCHE遺伝子は、X9株由来CHEのオルソログであると考えられた。本研究で見出されたCHEのオルソログは、S.griseus、S.lavendulaeといった他の放線菌に見出されるがその他の生物には見出されない放線菌に特異的に広く分布する酵素であると考えられた。系統解析の結果から、Streptomyces属細菌由来のCHEを新たなCHEファミリーとして提案した。 一方、本CHEのエステル合成反応を利用したコレステロールエステルの合成を検討した。X9株のCHEの粗精製画分を用いて、cholesteryl linoleateの酵素合成を試みた。まず、2-propanolを含んだ反応液中でcholesterolとlinoleic acidとのエステル化を試みた。反応後の反応液をTLCに供したところ、市販のcholesteryl linoleateと同じRf値を示すスポットが確認されたことから、本CHEを用いてcholesteryl linoleateを合成できることが示された。次に、反応液中に含まれるアルコールの濃度と種類を検討し、反応条件を最適化した。また、本反応系を利用して、他の脂肪酸やステロールから様々なステロールエステルが合成できた また、好熱菌Thermus thermophilusのカロテノイド合成系遺伝子群の解析を行った。本菌由来のシトクロムP450(CYP175A, crtZ)遺伝子を発現させた組換え大腸菌を作製し、有用カロテノイドであるadonirubin(phoenicoxanthin)の合成に成功した。
|