研究概要 |
以前の研究で、CARDOの基質結合ポケット内に存在するI262,F275,Q282,F329の4つの残基に対する単一変異酵素の作製とcardazole(CAR),dibenzo-p-dioxin(DD),dibenzothiophene(DBT),anthracene(AN),fluorene(FN),fluoranthene(FRA)に対する活性検定が行われ、これらアミノ酸残基が基質特異性決定に重要であることが示されていた。本年度は、単一変異酵素17種、二重変異酵素11種について、さらに詳細に上記基質に対する活性検定を行った。その結果,I262V,Q282YにおいてCARの1-hydroxy-CARへの、F275WでFNの4-hydroxy-FNへの、I262LでDBTのDBT-5-okideへの変換活性が野生株と比較して顕著に上昇していた。また、I262W,I262AでDBTの芳香環への酸化能が、F275AでFRAへの酸化能が上昇した。それら変異酵素の中で、I262L,I262V,F275W,Q282N,Q282Yと、対照としての野生型酵素について、結晶構造解析に成功し、CARDO-O単体(F275W,Q282N)、CARDO-O:CARDO-Fの二者複合体(全て)、CARDO-O:CARDO-F:各種基質の三者複合体(I262L,Q282N以外)についてX線結晶構造解析により立体構造を明らかにした。さらに、I262Vについては、三者複合体に酸素が結合した構造も明らかにした。X線結晶構造解析による解析が困難だった一部の変異酵素・基質の組み合わせにおいては、ドッキングシミュレーションにより基質・酸素の結合位置を明らかにした。この構造情報に基づいて、変異酵素の活性の傾向を解釈し、基質特異性決定のメカニズムを推定した。
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