研究課題
本研究では揮発性高塩素化合物を高度に脱塩素化する偏性嫌気性細菌についてその脱ハロゲン呼吸のメカニズムを解明するため、基礎・基盤研究を行うが、本年度は以下の項目について検討した。1.テトラクロロエテン(PCE)をきわめて効率よくcis-1,2-ジクロロエテン(cis-DCE)へと脱クロル化するDesulfitobacterium hafniense Y51株について、その脱ハロゲン呼吸遺伝子pceABCTクラスターの高頻度欠失現象について詳細に研究した。その結果、2種類の欠失株(LD株とSD株)が認められ、LD株ではpceABCT遺伝子に隣接する二つの相同な挿入因子(ISDes1 & ISDes2)間での相同組換えによりpceABCTを含む6.5-kbの欠失が生起すること、SD株ではISDes1単独の欠失(1.6-kb)によりpcrABのプロモーターが欠失することが判明した。さらにISDes1-pceABCT-ISDes2が複合トランスポゾンとして機能することが明らかとなった。上記の相同組換えにより生じた欠失環状体はすべてRT-PCRにより、その存在を確認した。2.Y51株のpce遺伝子の転写発現についてはPCE脱ハロゲン酵素をコードするpceA、膜アンカータンパク質であるpceB、機能不明なpceCの三遺伝子は共転写すること、トリガーファクター遺伝子pceTは単独で転写することが明らかとなった。3.PCEを効率よくエテンへと完全脱塩素化するコンソーシアを確立した。このコンソーシアでは酢酸あるいは蟻酸を電子供与体として添加することで脱塩素化が高度に促進された。このコンソーシアからcis-DCEおよびビニルクロライドをエテンへと脱クロル化する遺伝子の存在を確認した。
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