アフラトキシンは特定のカビが生産する二次代謝産物であり、自然界で最も強力な発癌性を示すとともに強力な急性毒をしめす。アフラトキシン生産は環境に適応した敏感な制御を受けている。アフラトキシンに関与するほとんどの酵素遺伝子は70kbに及ぶ遺伝子クラスターを構成し、遺伝子クラスター上の制御遺伝子aflRの発現によってポジティブに制御されている。そこで、本研究は、環境変化がどのようにaflRの発現を制御するかを解明することが目的である。 環境とアフラトキシン制御遺伝子aflRの発現の間に関与する情報伝達機構を解明するため、17年度は、aflRのプロモーター遺伝子領域とやはり制御遺伝子と考えられているaflJ遺伝子領域、更にaflR遺伝子の発現によって発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域の下流にβ-glucuronidase(GUS)レポーター遺伝子領域を含んだ発現ベクターを構築した。一方、アフラトキシン遺伝子クラスター領域を欠失したカビからプロトプラストを調製し、発現ベクターで形質転換した。複数の形質転換体が得られ、GUSの基質を培地に加えて培養する事で青色を示す変異株が得られ、酵素が菌体内で有意に活性を示すことが確認された。 培養条件の違いとレポーター遺伝子の発現の関係を調べるため、アフラトキシン生産培地又は非生産培地で形質転換体を培養し、青色の生産を指標に酵素活性を検討した。その結果、酵素活性はいずれの培地でも有意な活性が得られた。今年度はランダム導入による検討を行ったため、ベクターはアフラトキシン遺伝子クラスターとは異なる部位に入った可能性が極めて高い。従って、aflR遺伝子領域を含んでいても染色体上遺伝子クラスターとは離れた領域に導入された場合には異なる制御を受け、つまりアフラトキシン遺伝子クラスターの発現には染色体上の局在が大きく関わっている可能性が示唆された。
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