研究概要 |
ESCRT(endosomal sorting complex required for transport)-I,-II,-III因子群はエンドサイトーシろにより細胞内に取り込まれた膜表面上の受容体がさらにエンドソーム膜の内部に陥入(出芽)する過程に作用すると考えられている。ESCRT-IのTSG101ならびにESCRT-III構成因子のCHMP4と相互作用するAlixは、カルシウム結合蛋白質ALG-2とカルシウム依存的に結合する。今年度は、ALG-2のX線結晶構造解析を行い、ALG-2がどのような構造原理に基づきAlixと結合するのかを明らかにした。すなわち、Ca^<2+>存在下と存在下の立体構造を比較することにより、Ca^<2+>依存的にALG-2のEF-hand 3(EF3)の構造が少し変化し、さらにEF4との間のループに存在するArg125の側鎖の構造が大きく変化することがAlixペプチドの結合に必要であることが判明した。また、変異体を用いた結合解析とあわせ、ALG-2と結合するために重要なAlixの残基を同定することができた。AlixのALG-2結合配列と類似した配列はリン脂質混合酵素Phospholipid scramblase 3 (PLSCR3)にも存在すること、さらに、PLSCR3は、このAlix型配列以外にもさらに別のnon-Alix型ALG-2と結合配列をもつこ.とを明らかにした。また、ALG-2の変異体を調製して、Alix、TSG101、Sec31A、annexinA7、annexinA11との結合比較を行ったところ、TSG101、annexin A7、annexin A11はAlix型、Sec31Aはnon-Alix型に分類されることが判明した。一方、AlixのBrolドメインと相同な領域をもち、さらにC末端がファルネシル化される新規因子を見出し、Broxと命名した。BroxはAlixやBro1ドメインをもつHD-PTPと同様もCHMP4と物理的に相互作用することを明らかにした。
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