研究概要 |
乾燥ストレスや浸透圧ストレスに対処するためのイオン輸送系の同定と機構の解明を試みた。植物のHKT系輸送体とその同属輸送系のラン藻のKtr系を中心に検討した。 1 シロイヌナズナAtHKT1の発現部位:シロイヌナズナAtHKT1抗体を用いて免疫電子顕微鏡観察により、野生株の道管に隣接する細胞である木部柔組織の細胞の原形質膜にAtHKT1が局在していることが明らかとなった。 2 シロイヌナズナAtHKT1の高浸透圧適応性:塩ストレスを負荷した生育条件におけるathkt1変異株の道管と師管のNa/K濃度の比は、道管で高く篩管で低かった。Na, K添加により約50mM辺りまでは濃度依存的にAtHKT1の転写量は増加したが100mM程度では低下した。ソルビトールやマンニトールでも同様の傾向が観察され、AtHKT1の発現は高浸透圧により増加した。以上の結果,から、AtHKT1は植物へのNa取り込み口で塩害と高浸透圧に対して働くことが示された。 3 HKTの構造と機能:植物HKT系トランスポーターの膜貫通領域に保存されている正電荷アミノ酸のアミノ酸置換でKおよびNa輸送活性は小さくなる。この正電荷アミノ酸は近郊に配置されている負電荷アミノ酸と静電気的相互作用を形成していることが予想された。 4 浸透圧適応に関与するKtrの構造と機能:pHセンサーと考えられているHisがKtr系に存在する。このHisは他の残基への置換で活性が低くなったことから、正規の構造維持に必須のアミノ酸であることが明らかとなった。 5 Na/Hアンチポーターの機能と役割:ラン藻のNa/HアンチポーターのNa/Hアンチポート活性を検出した。さらに、正電荷アミノ酸を置換して、輸送活性に関与するアミノ酸を検索し、輸送活性に関与するアミノ酸を同定した。
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