研究課題
サーモライシン(以下TLN)は高活性と広い基質特異性をもつ金属プロテアーゼである。また、好熱性酵素であり、至適温度は70℃、熱失活のT50は87℃である。高濃度の中性塩の添加により、活性は指数関数的に増大し、4M NaC1存在下では13倍活性化が起す。この特性に基づき、TLNはアスパルテームの酵素合成に利用されてきた。さらに、TLNの分子活性と熱安定を上昇、作用域の酸性pH域への拡大が望まれている。TLNの分子表面にあり活性部位から比較的離れた位置にある7個のSer残基をそれぞれ部位特異的変異導入によりAspに変換し負電荷を導入した。7個の変異TLNは野生型TLNに匹敵する活性を保持し、うち6個は4 M NaC1存在下の活性化は17-19倍となった。10mM Ca2+存在下、85℃で30分保温したときの活性は、野生型TLNでは51%に低下したが、Ser53とSer65をAspに変換した変異TLN(S53D,S65D)では78と63%に低下した。変異導入により熱安定性が上昇した。S53Dは熱変性の活性化エンタルピー増大により、S65Dはエントロピー減少により、安定化が達成されたと考えられた。100mM Ca2+存在下に野生型酵素はS53DやS65Dと同程度の活性を示した。S53DとS65Dの高い熱安定性は、低Ca2+濃度でもCa2+がSer53とSer65で保持され、これらの周囲の自由度の抑制に起因すると判断した。Ser53とSer65付近の自由度をさらに抑制することにより、熱安定性をより増大できる。L144S、三重変異体G8C/N60C/S65P、四重変異体G8C/N60C/S65P/L144Sは野生型TLNに比べて、5-10倍活性化された。変異酵素は熱安定性も増大したが、四重変異体の安定化は、L144Sと三重変異体で個別にもたらされた安定化の相加として解釈できた。L144Sでは活性部位に安定性を導入し、三重変異体ではN末端にS-S結合を導入して安定化した。この両者を持つ変異酵素は両方の安定化効果を相加的に発揮した。高活性をもちつつ安定性も向上したTLN変異体を作出した。これらの変異酵素は野生型酵素に比べ、酸性pH域で高い酵素活性をもち、当初の目的が達成できた。
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