研究概要 |
昨年度までの研究により,MDRを含む全ての耐性HISに対して極めて高い活性を示し,マウス急性毒性が皆無であり,しかも血漿中での安定性にすぐれ,さらにそのトリリン酸体が,ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬の生体毒性の主原因であるミトコンドリアDNAポリメラーゼγに対する阻害活性も低い,画期的抗エイズ薬となりうる2'-deoxy-4'-C-ethynyl-2-fluoroadenosine(1)の創製に至った。本年度は,同薬剤の臨床試験に向けた効率的大量合成法の確立,および,同薬剤のテトラヒドロフラン環部をシクロペンタン環に改変して,更なる安定性および活性の向上,毒性の低減を目指した新規炭素環型類縁体(2)の合成法の開発について研究を実施した。容易に入手可能な4-pentenoic acidのEvans型オキサゾリジノン誘導体を不斉酸化して,3'-OH基を導入し,さらに4'-位のアセチレン基の導入等(3工程)を経て,(S)-1-TMS-4-TBDPSoxy-6-hepten-1-yn-3-oneを調製した。このケトンにbenzyloxymethyl anionをジアステレオ選択的に付加して4-位の不斉4級炭素を構築し,末端二重結合をオゾノリシスすることによりフラノース環を形成させた。今後は,1級ヘミアセタール性水酸基を活性化してから2-fluoroadenineを導入し,脱保護することにより1の大量合成法を完成する(全工程9工程の効率的合成法となる)。類縁体2の合成については,マロン酸ジメチルからキチの4工程で収率よく得られる1-benzyloxymethyl-3-cyclopentene-1-methanolをエポキシ化し,塩基によるアリルアルコールへの変換,1位水酸基の選択的保護,4-位ヒドロキシメチル基のアセチレンへの変換により塩基導入前駆体を得た(後2〜3工程で合成が完了する)。
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