研究概要 |
アロサミジンは放線菌が二次代謝産物として生産する擬似三糖であり、強力なキチナーゼ阻害活性を有する。本研究では、1.アロサミジンが生産菌自身に対しキチナーゼ生産促進活性を示す現象の分子レベルでの解明、および、2.アロサミジンによる抗喘息作用の機構解明と新しい治療薬の開発、を目的とする。 1に関しての成果 ・アロサミジン生産放線菌の菌体に生産されるアロサミジンは、キチンのキチナーゼによる分解産物であるN,N'-diacetylchitobioseによって菌体外に放出されることが明らかになった。 ・アロサミジン生産放線菌では調べた3株全てにおいて、アロサミジンによるキチナーゼ促進作用が見られ、生産促進されるキチナーゼおよびその上流の2成分制御系の遺伝子は類似していた。 ・アロサミジン非生産のStreptomyces coelicolorおよびStreptomyces griseusにおいてもアロサミジンは2成分制御系を持つキチナーゼの生産を促進することが示された。 ・土壌から無作為に分離したStreptomyces属放線菌6株全てに対してアロサミジンはキチナーゼ生産促進活性を示した。アロサミジンは放線菌に共通したキチナーゼ生産機構に作用していると考えられ、その分子機構の詳細を次年度明らかにする。 2に関しての成果 ・アロサミジンの類縁体であるデメチルアロサミジンが喘息モデルマウスを用いた実験で、アロサミジンより強く効果的な抗喘息作用を示すことが明らかになった。 ・組み換え体酸性キチナーゼに対する酵素阻害活性はアロサミジンとデメチルアロサミジンで差が見られず、酸性キチナーゼ以外にもアロサミジンが作用する分子が存在する可能性が示された。次年度はその分子を解明する。
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