研究概要 |
アロサミジンは放線菌が二次代謝産物として生産する擬似三糖であり,強力なキチナーゼ阻害活性を有する。本研究では,1.アロサミジンが生産菌自身に対しキチナーゼ生産促進活性を示す現象の分子レベルでの解明,および,2.アロサミジンによる抗喘息作用の機構解明と新しい治療薬の開発,を目的とする。 1に関しての成果 ,アロサミジンが2成分制御系のセンサー部分に作用する分子機構解明のため,強いキチナーゼ阻害活性を保持したアロサミジンフォトアフィニティープローブの作製に成功した。フォトアフィニティープローブはアロサミジン生産菌に対してキチナーゼ生産促進活性を示し,また結合実験により膜タンパク質画分の65kDaキチナーゼおよびセンサーヒスチジンキナーゼとプローブが結合する可能性が高いことが示された。即ち,アロサミジンはN-アセチルキトビオースによって生産誘導されるキチナーゼに結合した状態で細胞膜に移動し,キチナーゼとアロサミジン複合体がリガンドとしてセンサー部分に作用し,2成分制御系を活性化しキチナーゼ生産を促進する機構が推定された。 2に関しての成果 ,アロサミジンおよびアロサミジンより強力な抗喘息作用を示すデメチルアロサミジンそれぞれのフォトアフィニティーおよびビオチン化プローブを作製した。それらは全て強いキチナーゼ阻害活性を保持していた。 ,喘息マウス肺胞洗浄液中にアロサミジン類と特異的に結合する喘息時発現タンパク質をフォトアフィニティープローブを用いて探索したところ,キチナーゼ様タンパク質Ym-1がアロサミジン類と特異的に結合することが示された。 ,大腸菌発現組み換え体Ym-1を調製し,生体分子間相互作用解析装置とビオチン化プローブを用いてアロサミジン類とYm-1の結合の強さを調べた。その結果,アロサミジン,デメチルアロサミジンともに解離定数が数十nMでYm-1と強く結合することが示された。さらにデメチルアロサミジンのYm-1に対する親和性がアロサミジンより数倍強いことが判明し,invivoの抗喘息作用の強さに関係する可能性が示された。
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