研究概要 |
1.IgA産生増強細胞の解析 これまでの結果からパイエル板(PP)CD3-IL-2R+細胞がウイルス成分(polyl:C)刺激を受け,CCR9を発現することが明らかになり,粘膜固有層へ移動する可能性が示されていた。そこで,CD45.2発現マウスのPPCD3-IL-2R+細胞を,CD45.1発現マウスに移入し,移入細胞の移動先を解析した。その結果,polyI:C刺激したPPCD3-IL-2R+細胞はLPで,無刺激の細胞はPPで多く検出された。以上の結果からPPCD3-IL-2R+細胞はウイルス成分を認識してCCR9を発現し,粘膜固有層へと移動することが強く示唆された。 一方で,CD3-IL-2R+細胞が腸内共生細菌の刺激を受け,IgA産生を促進する可能性を検討した。無菌マウス(GFマウス)を解析したところ,腸管lgA量が低下しており,さらにPPCD3-IL-2R+細胞はIL-5mRNA発現が低く,B細胞と共培養した結果,IgA産生促進効果がSPFマウスに比べて低下していた。以上の結果から,PPCD3-IL-2R+細胞は腸内細菌刺激にも応じてB細胞のlgA産生を促進することが示唆された。 2.経口免疫寛容における制御性低応答化T細胞の解析 導入TCRのみを発現するRag2-/-DO11.10TCR-Tgマウス,もしくは同マウス由来の未感作T細胞を綱胞移入したBALB/cマウスに抗原を経口投与したところ,CD62Lhigh/intCD44intT細胞とCD62LlowCD44highT細胞群の誘導が確認された。両T細胞群は抗原に対して低応答化しており,CD62LlowCD44highT細胞群でFoxp3発現が高く,強い抑制活性が観察された。これまでの結果も合わせ,抗原の経口摂取によって抑制機能の異なる二つの低応答化制御性T細胞群が誘導されることが明確に示された。
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