1.IgA産生増強細胞の機能発現機構の解析: 腸管におけるIgA抗体産生は、感染防御の最前線であり、IgA産生を増強する細胞群は、食品による感染防御能増強の重要な標的である。本研究では、腸管特有のIgA産生増強細胞として発見したCD3^-IL-2R^+細胞について、本細胞における微生物レセプターTLRの発現や、TLR3リガンドでウイルスRNAモデル物質であるpoly I:Cに対する応答性、また無菌マウスにおける本細胞を解析した。得られた結果から、腸管CD3-IL-2R+細胞はウイルス、腸内細菌刺激に応じてB細胞のIgA産生を促進し、またその際、腸管パイエル板において刺激を受け、粘膜固有層へ移動することが示唆された。また、同じく腸管においてIgA産生を増強することを見出している樹状細胞について、微生物刺激を受けた腸管樹状細胞がIL-6等を介してT細胞非依存的にIgA産生を促進することを示唆する結果を得た。 2.経口免疫寛容における制御性低応答化T細胞の機能発現機構の解析: 経口免疫寛容は、食物アレルギーの抑制機構であり、経口免疫寛容における制御性低応答性T細胞は、アレルギー抑制食品の標的となる。鶏卵卵白アルプミン(OVA)を認識するT細胞抗原レセプターを発現するDOll.10トランスジェニックマウスにOVAを経口投与することにより、2種の制御性低応答化T細胞:CD62L^<high/int>CD44^<int>T細胞、CD62L^<low>CD44^<high>T細胞が誘導された。CD62LlowCD44high T細胞群は、Foxp3発現が高く、強いアポトーシス誘導活性を有していた。一方でCD62L^<high/int>CD44^<int>T細胞の抑制活性はTGF-βによるものであった。これまでの結果も合わせ、経口免疫寛容において抑制機能の異なる二つの低応答化制御性T細胞群が誘導されることが明確に示された。
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