酵母でアミロイド型蛋白質(アミロイド型リゾチーム、アミロイド型シスタチン)を発現分泌させる系を用いて食品由来の成分で、アミロイド凝集を防ぐ因子を明らかにするためのアッセイ系を確立した。酵母でのアミロイド型蛋白質を発現分泌する系を用いて、食品由来成分中のアミロイドシス抑止成分を検索する方法はよりin vivoに近いものであり、この結果を最終的にアミロイドモデルマウスでの実験により確認することを目的として研究を行った。 昨年度はアミロイド型シスタチンを酵母で発現、分泌するシステムを用いて、種々の食品成分のアミロイド凝集抑制効果を調べたところカテキン、エピガロカテキンなどに高いアミロイド抑制効果を確認し、この作用がアミロイド形成の核になるダイマー形成を抑制することに由来することを明らかにした。今年度は以下のような成果が得られた。 (1)酵母でのアミロイド型蛋白質分泌系を用いたアッセイにより、カテキン類以外の食品由来成分(糖、ペプチド、ポリフェノールなど)を用いてアミロイド凝集抑制作用を調べ、また、納豆菌や酢酸菌に多く含まれるPQQ、トウモロコシに含まれるメラトニンなど食品中に存在する補酵素、ホルモン様物質の効果も検討すした。その結果PQQに顕著なアミロイド凝集抑制作用があることが示された。 (2)アミロイド型リゾチームおよびシスタチンの凝集抑制のための遺伝子工学的研究を行った。アミロイド型シスタインにN-型糖鎖付加シグナル配列を導入すると、アミロイド凝集が著しく抑制されることが示された。また、リゾチームのヘリックスを安定化するアミノ酸置換を行うことにより、アミロイド凝集が抑制できることが示された。これらの発見は将来的にアミロイドシスを抑制するための遺伝子治療に利用できる。 (3)さらに、アミロイド型リゾチーム・シスタチン発現マウスの作成を行っているが、今回は間に合わなかったが、作成できれば動物実験をスタートさせるための準備を行っている。
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